国際監査基準ISA600(グループ財務諸表の監査)の改訂版が適用開始となって以降、海外親会社を持つ日本法人の監査現場では、グループ監査人からの要求が目に見えて厳格化しています。本コラムでは、改訂ISA600が外資系企業の日本子会社にもたらす実務上の変化を整理します。
改訂の背景とポイント
従来のグループ監査では、重要な構成単位(Significant Component)か否かという区分に基づいて手続の深度が決まる、やや杓子定規的な運用がなされてきました。改訂ISA600は、このアプローチを改め、グループ監査人がリスク・アプローチに基づいて構成単位ごとの手続を設計し、コンポーネント監査人の作業により深く関与することを求めています。
| 項目 | 従来の運用 | 改訂ISA600適用後の運用 |
| 手続の決定アプローチ | 重要性(規模など)による機械的な区分 | グループ全体の「リスク・アプローチ」に基づく設計 |
| グループ監査人の関与 | コンポーネント監査人への指示と結果受領 | 双方向コミュニケーションの頻発化、調書レビューの強化 |
| 構成単位(子会社)の扱い | 一律の法人単位を基本とする | リスクに応じて特定の勘定科目のみを対象とするなど柔軟化 |
具体的には、グループ監査人による指示の詳細化、コンポーネント監査人とのより頻繁な双方向コミュニケーション、監査調書のレビュー強化、独立性・品質管理体制に関する確認手続の厳格化などが挙げられます。
日本子会社の現場で起きていること
この改訂により、日本のコンポーネント監査人には従来以上の対応力が求められるようになりました。グループ監査人からの質問状や電話会議の頻度が増え、リスク評価の根拠や手続の実施状況について、英語で具体的に説明する場面が格段に増えています。
企業側にも影響があります。グループ監査人の関与が深まる分、追加の資料依頼や質問が子会社経理部門に降りてくるケースが増えており、「例年どおり」では済まない決算対応が必要になっています。また、コンポーネント監査人の品質や対応力がグループ監査人の目に直接触れるため、国際基準への対応力が不足する監査人を選任していると、親会社サイドから監査人の変更を示唆されることさえあります。
なお、改訂基準では「構成単位」の考え方自体も見直され、必ずしも法人単位ではなく、グループ監査人がリスクに応じて手続の対象と深度を柔軟に設計できるようになりました。その結果、従来はレビューや分析的手続のみで済んでいた日本子会社に対して、特定の勘定科目についてフルスコープに近い手続が求められるようになった、というケースも出てきています。自社に求められる手続の範囲が毎年変わりうることを前提に、監査人・親会社と早めに認識を合わせておくことが肝要です。
求められる監査人像
改訂ISA600時代のコンポーネント監査人には、ISAに準拠した監査の実施能力、英語での機動的なコミュニケーション、グループ監査人の品質管理レビューに耐えうる調書作成力が不可欠です。単に日本の監査資格を持っているだけでは、グループ監査の一翼を担うことは難しくなっているのが実情です。逆にこれらが対応できない監査法人である場合、結果的にクライアント自身、日本の外資系子会社への決算数値への信頼が揺らぎ、海外親会社からの信頼が得られない、親会社監査人のストレスが溜まったり、さらに外資系子会社への監査工数が追加で行われるなど、決算や監査工数の増加とコスト増につながるリスクがあります。
SMASH国際監査法人は、リファーラル監査・コンポーネント監査を得意分野とし、Big4やその他グローバルネットワークのグループ監査人との協働経験を豊富に有しています。改訂ISA600への対応で現在の監査人が親会社監査人とのコミュニケーションに課題を感じている企業様、現在の監査法人にグローバル力や英語力に懸念がある企業様、最近の会計基準・監査基準やIFRSなどの知識に不安があることから発生する監査法人の変更・新規選定をご検討の企業様は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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