「うちは非上場だから監査は不要」──外資系企業の日本法人でも、しばしばこうした誤解を耳にします。しかし日本の会社法は、上場・非上場を問わず一定規模以上の株式会社に会計監査人による監査を義務付けており、外資系企業も例外ではありません。本コラムでは、見落とされがちな会社法監査の要件と実務対応を解説します。

「大会社」に該当すると監査が義務化される

会社法上、最終事業年度の貸借対照表において、以下のいずれかの基準を満たす株式会社は「大会社」と定義され、会計監査人(監査法人または公認会計士)の設置が義務付けられます。

判定項目義務化の基準値外資系企業における注意点
資本金基準5億円 以上日本進出時に親会社が潤沢な資金を投入し、事業規模に対して資本金のみが膨らんでいるケースが多い。
負債総額基準200億円 以上親会社からの多額のグループ内借入(インターカンパニーローン)によって、ある年度から突然基準を超えるケースがある。

外資系企業で特に注意したいのが資本金の要件です。日本進出時に親会社が潤沢な資本を投入した結果、事業規模は小さくても資本金が5億円以上となっているケースは少なくありません。また、負債基準についても、親会社からの多額のグループ内借入(インターカンパニーローン)によって負債総額が200億円を超え、ある年度から突然監査義務が発生するというケースがあります。

監査義務を放置するリスク

会計監査人の設置義務を怠った場合、過料の制裁が科される可能性があるほか、計算書類の確定手続に瑕疵が残することになります。実務上より深刻なのは、金融機関からの借入、大型の取引契約、将来的なM&Aや事業再編の局面で、適法な決算手続を経ていないことが問題視されるリスクです。海外親会社のガバナンス方針との関係でも、現地法令違反はレピュテーション上看過できません。

外資系企業の場合、日本の会社法監査とは別に、親会社の連結目的でのリファーラル監査(グループ監査人からの依頼に基づく監査、リファード監査ともいう)がすでに行われていることがあります。「グループ監査は受けているから大丈夫」と考えがちですが、リファーラル監査は親会社の監査人向けの報告であり、会社法上の会計監査人監査の代わりにはなりません。両者は目的も報告先も異なる別個の制度である点に注意が必要です。

初年度監査に向けた準備

初めて会社法監査を受ける場合、期首残高の検証を含め、通常より多くの準備が必要です。固定資産台帳の整備、引当金の計上方針の明文化、在庫の実地棚卸体制の構築など、監査に耐えうる決算体制を整えるには相応の時間がかかります。監査義務が視野に入った段階で、できれば該当年度の前年から監査法人に相談し、ショートレビューや体制整備の支援を受けておくことをお勧めします。

なお、資本金を減資して5億円未満とすることで大会社から外れるという選択肢もありますが、親会社の意向、対外的な信用力、税務上の影響を総合的に検討する必要があり、安易な判断は禁物です。

SMASH国際監査法人では、外資系企業・海外子会社を持つ非上場企業の会社法監査を数多く担当しており、初年度監査に向けた事前準備のご支援から対応可能です。「自社に監査義務があるのか分からない」という段階のご相談も歓迎いたします。監査法人の変更・新規選定をご検討の企業様は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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