監査が始まると、取引先や銀行に対して「確認状」が発送されます。売掛金・買掛金の残高、預金残高、借入金の残高などについて、監査人が第三者に直接問い合わせる手続です。取引先に手間をかけることを気にする経理担当者も多いのですが、この手続は監査の中でも特に証拠力が高いものとして位置付けられています。本コラムでは、残高確認の意味と、企業側でできる準備を解説します。

残高確認(確認状)の対象と企業側の準備

項目内容
確認状とは監査人が取引先・金融機関等の第三者に直接残高を問い合わせ、回答も監査人宛に直接返送してもらう手続
証拠力が高い理由会社を経由せず外部から入手する証拠であるため
主な対象預金・借入金(銀行)/売掛金・買掛金(主要取引先)/預け在庫(外部倉庫)/訴訟(弁護士)/グループ会社間の債権債務など
準備①取引先の連絡先・担当部署情報及び発送時に記載する会計帳簿残高の整備
準備②取引先への事前の一報(回答率が大きく改善)
準備③未回答時の代替手続用資料(入金記録・納品書等)と差異調査の準備

なぜ第三者に直接聞くのか

監査人は、会社が作成した帳簿や資料だけでなく、会社の外部から入手した証拠を重視します。会社の内部で作られた証拠は、誤りや意図的な操作の可能性を完全には排除できないからです。確認状は、監査人が取引先や金融機関に直接送付し、回答も監査人宛に直接返送してもらう形を取ります。会社を経由しないことで証拠の信頼性が確保されるため、企業側が回答を代わりに取りまとめることはできません。

対象となる主な項目

預金・借入金については銀行に対して、残高に加え担保や保証の状況まで確認します。売掛金・買掛金は、金額の大きい取引先や取引の性質上リスクが高い先を中心に選定されます。このほか、預け在庫の外部倉庫、訴訟の状況を確認する弁護士、海外親会社・グループ会社との債権債務残高なども対象になります。外資系企業では、グループ内の債権債務残高について本国側の監査人と相互に確認し合う場面も生じます。

企業側の準備と注意点

第一に、取引先の連絡先情報の整備です。宛先の誤りや担当部署の不明は回答率を下げる最大の要因です。第二に、取引先への事前の一報です。監査人からの確認状が届く旨を伝えておくだけで、回答率は大きく改善します。第三に、未回答・差異への対応です。回答が得られない場合、監査人は入金記録や納品書などで代替手続を行うため、それらの資料をすぐ提示できる状態にしておくことが重要です。残高に差異があれば、計上タイミングの違いなのか誤りなのかを速やかに調査し、説明できるようにしておきます。

まとめ

確認状は取引先への負担ではなく、会社の帳簿の信頼性を外部が裏付けてくれる手続です。準備の質が回答率と監査の効率を左右します。

企業側の視点──この論点で監査人選びが重要な理由

確認手続は監査人が主体となる手続ですが、その設計次第で企業と取引先の負担は大きく変わります。対象先の選定が機械的で件数が過大、海外取引先向けの英文確認状に対応できず企業側に翻訳を求める、未回答時の代替手続を企業に丸投げする──こうした監査人では、取引先との関係にも影響しかねません。外資系企業では、本国の親会社やグループ会社との残高を本国監査人と相互に確認する場面もあり、海外とのビジネス経験が豊富にあるかどうか、英語で直接調整できるかどうかが実務の負担を左右します。

SMASH国際監査法人は、外資系企業・海外子会社を持つ企業の監査を専門とし、海外取引先や親会社への英文確認、本国のグループ監査人との相互確認を日常的に行っています。パートナーが直接関与する少人数体制のため、リスクに応じた確認先の絞り込みや、未回答時の代替手続まで機動的に設計できます。

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執筆者: 森 大輔(公認会計士) https://smash-international.com/people/mori/