期末近くになると、監査人から「実地棚卸に立ち会わせてください」という連絡が入ります。倉庫や工場に監査人が足を運び、現物を数えるこの手続は、監査の中でも最も”物理的”な手続です。なぜ監査人はわざわざ現場まで来るのか、企業側は何を準備すべきなのか。本コラムでは、棚卸立会の意味と実務を解説します。
■ 実地棚卸立会で監査人が確認するポイント
| 確認項目 | 内容 |
| 手続の運用状況 | 棚卸指示書・タグ管理などが計画どおり運用されているか |
| カウントの正確性 | カウント漏れ・二重カウントを防ぐ仕組みがあるか(監査人自身も試査) |
| カットオフ | 棚卸期間中の入出庫が適切に管理されているか |
| 評価 | 長期滞留品・破損品・陳腐化品の扱いと評価減の要否 |
| 企業側の準備 | 棚卸手順書の整備/事前の整理整頓/帳簿と実地の差異調査の記録/海外・外部倉庫の立会方法の事前協議 |
立会の目的
棚卸資産は、金額が大きく、評価に判断が伴い、そして不正や誤謬が起きやすい勘定科目です。帳簿上の数量が正しいか、実物が存在するか、滞留・劣化した在庫が適切に評価減されているか──これらは書類の検討だけでは確かめられません。監査人が立ち会う目的は、会社の棚卸手続が適切に設計・実施されているかを観察し、自らも一部の品目を試査(テストカウント)することで、在庫の実在性と網羅性についての証拠を得ることにあります。
監査人が見ているポイント
監査人が現場で確認するのは数量だけではありません。棚卸の指示書やタグ管理などの手続が計画どおり運用されているか、カウント漏れや二重カウントを防ぐ仕組みがあるか、棚卸期間中の入出庫が管理されているか(カットオフ)、そして長期間動いていない在庫や破損品・陳腐化品がどう扱われているかを観察します。監査人が棚卸現場で「動きのない在庫」に気づき、評価減の検討につながることは珍しくありません。
企業側の準備
第一に、棚卸手続の文書化です。誰が、いつ、どの範囲を、どのように数え、差異をどう調査するかを定めた手順書が、監査人の観察の前提になります。
第二に、事前の整理整頓です。品目の混在や置き場所の不明確さは、棚卸の精度を下げ、監査人の試査にも時間がかかります。
第三に、差異調査の記録です。帳簿と実地数量(カウント数量)の差異は生じるものであり、その原因分析と修正の記録こそが監査上の重要な証拠になります。海外の倉庫や外部倉庫に在庫がある場合は、立会の可否や現地監査人との連携を早めに監査人と協議しておく必要があります。
まとめ
棚卸立会は「監査人に見られる日」ではなく、自社の在庫管理の精度を外部の目で確認してもらう機会です。日頃の在庫管理の質が、そのまま監査の負担と結果に表れます。
企業側の視点──この論点で監査人選びが重要な理由
棚卸立会は、監査人の実務対応力が最も分かりやすく表れる手続です。海外の倉庫や外部倉庫に在庫がある場合、現地への立会や現地監査人への依頼・評価が必要になりますが、国際対応に慣れていない監査人ではこの調整に時間がかかり、期末スケジュールを圧迫します。また、初めて監査を受ける企業にとっては、棚卸手順書の整備や滞留在庫の評価について事前に助言してくれる監査人かどうかで、初年度の負担がまったく変わります。立会当日に指摘を受けてから慌てるのではなく、前段階から伴走してくれる監査人を選ぶことが重要です。
SMASH国際監査法人は、外資系企業・海外子会社を持つ企業の監査を専門とし、海外拠点・外部倉庫での棚卸立会や現地監査人への立会依頼といった国際的な対応を日常的に行っています。
棚卸手順書の整備や滞留在庫の評価についても、監査の前段階からアドバイスいたします。在庫管理・棚卸手続の整備にお悩みの企業様、監査法人の変更・新規選定をご検討の企業様は、お気軽にお問い合わせください。
Email: info@smash-international.com
執筆者: 森 大輔(公認会計士) 森 大輔 – 主なメンバー – SMASH国際監査法人・アドバイザリー合同会社
