決算日を過ぎてから、大口取引先が倒産した。火災で工場が被災した。大型のM&Aを決議した。こうした「決算日後に発生した出来事」を、当期の決算にどう扱うべきか──これが後発事象の論点です。2026年1月9日には企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」および適用指針第35号が公表され、従来は日本公認会計士協会の監査実務指針で示されていた内容が、その内容を基本的に踏襲する形で会計基準として整備されました。適用は2027年4月1日以後開始する事業年度からで、早期適用は認められていません。本コラムでは、その基本的な考え方を解説します。

修正後発事象と開示後発事象の違い

 修正後発事象開示後発事象
性質決算日時点ですでに存在していた状況を裏付ける事象決算日後に新たに発生した事象
財務諸表への影響数値を修正する数値は修正せず注記で開示
典型例決算日時点で悪化していた取引先の倒産、訴訟判決の確定、棚卸資産の期末後売却決算日後の火災、大規模M&Aの決定、重要な資金調達
判断の難所「決算日時点で状況が存在していたか」の見極め翌期以降への影響の重要性の判断
基準の適用時期企業会計基準第41号(2026年1月9日公表)は2027年4月1日以後開始する事業年度から適用。早期適用は不可 

二つの後発事象

後発事象は、決算日後、財務諸表の公表承認日(会社法の計算書類では確認日)までに発生した事象のうち、財務諸表に影響を及ぼすものをいい、性質により二つに分けられます。

修正後発事象は、決算日時点ですでに存在していた状況を裏付ける事象です。たとえば、決算日時点で財政状態が悪化していた取引先が決算日後に倒産した場合、その債権の貸倒れは当期の財務諸表に反映(修正)する必要があります。訴訟の判決確定や、棚卸資産の期末後の売却による正味売却価額の判明も典型例です。

開示後発事象は、決算日後に新たに発生した事象で、翌期以降の財政状態や経営成績に重要な影響を与えるものです。決算日後の火災、大規模なM&Aの決定、重要な資金調達などがこれにあたり、財務諸表の数値は修正せず、注記で開示します。

実務上の難しさ

判断が難しいのは「決算日時点で状況が存在していたか」の見極めです。取引先の倒産は、決算日以前から兆候があったのか、決算日後の突発的事象なのかによって扱いが変わります。また、会社法の計算書類と金融商品取引法の財務諸表とでは基準日(確認日と承認日)が異なるため、その間に生じた事象の扱いにも注意が必要です。海外子会社がある場合は、現地の決算日後の重要事象を本社が把握する体制も問われます。

企業側の備え

決算日後も経営上の重要事象を経理部門が把握できる情報経路を持つこと、監査人へ速やかに共有すること、そして経営者確認書の提出時点までの事象を漏れなく検討することが実務の要点です。「決算は締めたから関係ない」という感覚が最も危険です

企業側の視点──この論点で監査人選びが重要な理由

後発事象は、決算日後の短い期間に、事象の把握・評価・開示判断を一気に進める必要がある論点です。監査人との連絡が取りにくい、判断に時間がかかる、といった状況では、監査報告書の発行が遅れ、株主総会や親会社の決算スケジュールに影響が及びます。外資系企業ではさらに、本国の決算承認日と日本の計算書類の確認日が異なるため、二つの基準日で事象を整理できる監査人でなければ、親会社への報告と日本の決算で扱いが食い違うリスクがあります。決算日後こそ、監査人の反応の速さと国際案件への理解が問われます。

SMASH国際監査法人は、外資系企業・海外子会社を持つ企業の監査を専門とし、日本における外資系企業や海外子会社で発生した事象の本社決算への反映や、基準日のずれの整理といった国際案件特有の論点に対応しています。会社法監査とリファーラル監査を同じチームで担当することで、二つの報告を整合的に処理できるのも当法人の強みです。監査法人選びにお悩みの企業様は、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者: 森 大輔(公認会計士) 森 大輔 – 主なメンバー – SMASH国際監査法人・アドバイザリー合同会社