外資系企業におけるリファーラル監査(又はリファード監査)は、日本の法定監査とは求められるものが異なります。監査の質そのものは高くても、グループ監査の仕組みに不慣れな監査人を選んだことで、日本法人の経理部門が苦労を強いられる例は少なくありません。本コラムでは、実際に相談を受けることの多い5つのつまずきを紹介します。

リファーラル監査でよくある5つのつまずき

つまずき何が起きるか企業側への影響
期限遅れ法定監査の感覚で期末後に手続を集中させ、数週間の報告期限に間に合わない本国の連結に遅れ、親会社から管理体制を問われる
英語対応不可グループ監査人との質問・会議に監査人が対応できない経理部門が「通訳」を担わされる
前提の取り違えコンポーネントの重要性やグループ会計方針を確認せず日本基準の感覚で進める手続不足を指摘され、期末後にやり直し
調書の不備国際基準に沿った文書化ができておらず、グループ監査人のレビューで追加手続を求められる追加の資料依頼が企業に降りてくる
独立性確認に未対応独立性確認書・品質管理質問票に適切に回答できないグループ監査に組み込めず監査人交代が必要に

つまずき①:期限に間に合わない

最も多いのがスケジュールの問題です。日本の法定監査は決算日から2〜3か月の余裕がありますが、グループ監査の報告期限は数週間です。この感覚の違いを理解せず、従来どおり期末後に手続を集中させた結果、本国の連結スケジュールに遅れが生じ、親会社から日本法人の管理体制そのものを問われる事態になります。

つまずき②:英語対応ができず、経理部門が通訳になる

グループ監査人からの質問や電話会議に監査人が対応できず、経理担当者が質問を日本語に訳して監査人に伝え、回答を英訳して返す──こうした「通訳業務」が経理部門に発生しているケースは驚くほど多くあります。本来、監査人同士で完結すべきやり取りが企業の負担になっている状態です。

つまずき③:重要性や会計基準の前提を取り違える

指示書で指定されたコンポーネントの重要性やグループ会計方針を十分に確認せず、日本基準・日本の法定監査の感覚で手続を進めてしまうと、グループ監査人から「手続が不足している」「基準が違う」と指摘され、やり直しが発生します。期末後にこれが起きると、期限遅れと二重の負担につながります。

つまずき④:調書レビューで不備を指摘される

改訂ISA600以降、グループ監査人はコンポーネント監査人の監査調書をより深くレビューするようになりました。国際基準に沿った文書化ができていない場合、追加手続や再作業を求められ、その資料依頼が企業側に降りてきます。

つまずき⑤:独立性・品質管理の確認に応えられない

グループ監査人は、コンポーネント監査人に独立性確認書や品質管理に関する質問票の提出を求めます。これに適切に回答できない監査人は、そもそもグループ監査に組み込めず、監査人の交代が必要になることもあります。

企業側の視点──なぜ監査人選びが重要なのか

これら5つに共通するのは、問題が「監査人の側」で起きているにもかかわらず、その負担が経理部門と親会社からの信頼に跳ね返っているという点です。リファーラル監査における監査人選びは、経理部門の年間の負荷、本国との関係、そして監査コストのすべてに関わる実質的な経営判断です。監査法人の規模やブランドではなく、グループ監査の仕組みを理解し、英語で完結できる体制があるかどうかが判断基準になります。外資系企業におけるリファーラル監査を適切に行うのは当然のこと、海外親会社や親会社監査人とも上手く連携して監査を進める監査人・監査法人を選択したことで、親会社からの信頼を構築し、より日本でのプレゼンスや業務がやりやすくなったという事例は少なくありません。

SMASH国際監査法人は、外資系企業へのリファーラル監査・コンポーネント監査を最も得意とする分野とし、大手監査法人を含む海外のグループ監査人との協働を通じて、上記のようなつまずきを避ける運営を確立してきました。

指示書の読み解き、英語での直接折衝、国際基準に沿った文書化、独立性・品質管理の確認対応まで、海外経験豊富なパートナーが直接担当いたします。大手監査法人からの引継ぎ実績も多数ございます。

現在の監査人の対応に上記のような課題を感じている企業様は、お気軽にお問い合わせください。

Email: info@smash-international.com

執筆者: 森 大輔(公認会計士) 森 大輔 – 主なメンバー – SMASH国際監査法人・アドバイザリー合同会社