2026年7月、クレジットカード決済代行会社の全東信(大阪市)が破産手続開始決定を受けました。東京商工リサーチの調査リポートによれば、同社は預金残高の水増し(約170億円)や架空債権の計上(約154億円)、実質的に無価値な営業権の過大計上(約88億円)などの手口により、少なくとも20年前から粉飾決算を続けていた疑いがあるとされています。帳簿上は約24億8,000万円のプラスだった純資産は、粉飾を是正すると実質約605億円の債務超過であった可能性があり、負債総額は約1,151億円。地方銀行の融資やクラウドファンディングを通じた個人投資家にまで影響が広がっています。
なぜ、これほどの規模の粉飾が20年もの間、明るみに出なかったのでしょうか。本コラムでは、この事件を題材に、会社法監査の義務と「監査の品質」という、意外に知られていない二つの論点を整理します。
”会社法監査を受ける義務があるのは、どのような会社か”
会社法は、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社を「大会社」と定義し(会社法第2条第6号)、大会社に対して会計監査人(公認会計士または監査法人)の設置を義務づけています(同法第328条)。会計監査人設置会社の計算書類は、会計監査人の監査を受けなければなりません(同法第436条第2項)。
ここで重要なのは、「上場・非上場を問わない」という点です。「うちは非上場のオーナー企業だから監査は関係ない」という認識は誤りであり、事業の成長に伴い資本金や負債が基準を超えれば、その時点で監査は法律上の義務となります。仮に全東信のように負債総額が1,000億円を超える規模であれば、本来は毎年、独立した監査人による監査を受けているべき会社であったことになります。
ところが実務の現場では、この義務を果たしていない「無監査の大会社」が相当数存在することが、かねてより指摘されています。会計監査人を選任しない場合の制裁は100万円以下の過料にとどまり(同法第976条)、行政による網羅的な捕捉も行われていないため、義務が事実上放置されやすい構造にあるのです。しかし、法令違反の状態にあるという事実は、金融機関の審査、M&A、事業承継、大手企業との新規取引など、あらゆる局面で経営の足かせとなり得ます。
”「監査を受けている」だけでは足りない──監査の品質という論点”
もう一つの論点は、監査の品質です。全東信の粉飾の中心は預金残高の水増しとされていますが、預金の実在性は、監査人が金融機関に直接残高確認を行うという、監査の最も基本的な手続によって検証される項目です。仮に適切な監査が行われていれば、この種の粉飾が20年間継続することは考えにくいといえます。
近年の粉飾事例では、①そもそも監査を受けていない、②監査を受けていても、独立性に疑義がある監査人や品質管理体制が不十分な監査人による形式的な監査にとどまっている、という二つのパターンが繰り返し見られます。監査は「受けていること」自体ではなく、「誰が、どのような品質で実施しているか」によって、その価値が大きく変わります。金融機関や取引先も近年はこの点を見るようになっており、監査人の体制や実績が、決算書の信頼性の評価に直結する時代になっています。
” 監査を受けることの実務上のメリット”
会社法監査は義務である一方、適切な監査を受けることは、企業にとって次のような実利をもたらします。
第一に、「金融機関からの信頼」です。監査済みの計算書類は与信判断の確かな裏付けとなり、資金調達の条件交渉においても有利に働きます。全東信事件のような事案が起きるたびに、金融機関の「無監査の決算書」を見る目は厳しくなっていきます。
第二に、「取引先・株主・従業員からの信頼」です。粉飾が発覚した企業と取引していた会社は、連鎖的に信用不安に晒されます。独立した監査人の監査を受けているという事実そのものが、取引継続の安心材料となります。
第三に、「経営管理体制の強化」です。監査の過程では、決算体制や内部統制の弱点が具体的に指摘されます。これは将来の上場準備、M&A、事業承継に向けた経営基盤の整備に直結します。
” SMASH国際監査法人のサポート”
SMASH国際監査法人は、日本・英国・米国の大手監査法人での勤務経験を有する公認会計士を中心とする監査法人として、会社法監査、リファーラル監査、任意監査からAUPまで、独立性と品質管理を徹底した監査サービスを提供しています。「大会社に該当するか判定してほしい」「金融機関から監査を求められた」「現在の監査人の品質に不安がある」「海外親会社から日本で監査を受けることを求められた」といったご相談にも対応しております。
信頼される決算書は、信頼される企業の土台です。私どもは、品質に妥協のない監査を通じて、信頼に足る企業を世の中に送り出すことを使命としています。会社法監査やその他監査に関するご相談は、どうぞお気軽にお寄せください。
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