親会社からの商品仕入、本国へのロイヤルティ支払、グループ会社への業務委託、役員が関係する会社との取引──こうした「関連当事者取引」は、外資系企業や海外子会社を持つ企業の日常そのものです。しかし監査の世界では、関連当事者取引は虚偽表示リスクの高い領域として、特に慎重な検討が求められる論点でもあります。本コラムでは、その理由と企業側の整理術を解説します。

関連当事者取引の管理ポイント

項目内容
監査で重視される理由取引条件を当事者間で自由に設計でき、個社の損益を実態から乖離させうるため。過去の会計不正でも繰り返し登場
監査人の確認事項関連当事者の網羅的な把握/取引の実在性と経済合理性/開示の適切性
つまずき①関連当事者の範囲の把握漏れ(役員やその近親者が支配する会社まで含まれる)
つまずき②グループ内サービスフィー・ロイヤルティの算定根拠が日本側に共有されていない
つまずき③注記(取引金額・残高・条件)を期末にゼロから集計している
対策関連当事者リストの毎期更新/グループ間契約と価格算定資料の日本側保管/勘定科目・取引先コードでの識別

なぜ厳しく見られるのか

理由はシンプルで、独立第三者間の取引と異なり、取引条件を当事者間で自由に設計できるからです。グループ全体の都合で価格や条件が決まる取引は、個社の損益を実態から乖離させる可能性があり、過去の会計不正でも、関連当事者を利用した利益操作や資金流用は繰り返し登場してきました。だからこそ監査人は、関連当事者の網羅的な把握、取引の実在性と経済合理性、そして開示の適切性を重点的に確認します。

企業側でつまずきやすいポイント

第一に、関連当事者の範囲の把握漏れです。親会社・兄弟会社だけでなく、役員やその近親者が支配する会社まで範囲は広く、海外の複雑な資本系列では「実は関連当事者だった」という発見が監査の終盤で起こりがちです。関連当事者の一覧(リスト)を毎期更新する仕組みが第一歩になります。

第二に、取引条件の説明資料の不足です。グループ内サービスフィーやロイヤルティについて、契約書はあるが算定根拠が日本側に共有されていない、というのは外資系企業の定番の課題です。本国からグループ間契約と価格算定の説明資料を入手し、日本側でも保管しておくことが、監査対応を格段にスムーズにします。

第三に、開示(注記)の整理です。会社法の計算書類でも関連当事者との取引の注記が求められ、取引金額・残高・条件の記載が必要です。期末にゼロから集計するのではなく、勘定科目や取引先コードの段階でグループ取引を識別できるようにしておくと、集計は仕組みで回せます。

まとめ

関連当事者取引は、隠すものではなく、きちんと把握し、説明し、開示するものです。その体制が整っている会社は、監査においても、親会社や外部からの信頼という意味でも、強い会社だといえます。

SMASH国際監査法人は、外資系企業のリファーラル監査・会社法監査を通じて、グループ内取引の整理と監査対応を数多く支援してきました。グループ取引の説明や開示にお悩みの企業様、監査法人の変更・新規選定をご検討の企業様は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆者: 森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)