決算書は、会社が将来にわたって事業を続けること(継続企業の前提、ゴーイング・コンサーン)を前提に作られています。しかし、赤字の継続、債務超過、借入金の返済困難といった状況が生じると、この前提そのものが監査上の重要な検討事項になります。外資系企業の日本法人では、戦略的に赤字が続く先行投資フェーズも珍しくなく、「うちは大丈夫なのか」というご質問をよくいただきます。本コラムでは、その仕組みを解説します。
■ 継続企業の前提に関する監査上の整理
| 項目 | 内容 |
| 疑義を生じさせる事象の例 | 継続的な営業損失、債務超過、重要な借入金の期限到来、主要取引先の喪失 |
| 経営者に求められる対応 | 事業継続能力の評価と、疑義を解消する対応策の検討 |
| 注記が必要となる場合 | 対応策を織り込んでもなお重要な不確実性が残る場合(監査報告書にも記載) |
| 注記が不要となる場合 | 合理的な経営計画や資金確保策により疑義が解消されると判断される場合 |
| 外資系企業に特有の論点 | 親会社による資金支援。サポートレター(支援表明)の入手が定番の対応 |
| サポートレターの確認事項 | 支援の内容・期間の具体性、親会社自身の財務能力、グループ監査人の見解との整合 |
監査上の枠組み
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象──継続的な営業損失、債務超過、重要な借入の期限到来、主要取引先の喪失など──が存在する場合、経営者は事業継続能力を評価し、疑義を解消できるかどうかを検討します。対応策を織り込んでもなお重要な不確実性が残る場合には、財務諸表への注記が必要となり、監査報告書にもその旨が記載されます。
ここで誤解されやすいのは、「疑義となる事象がある=注記が必要」ではないという点です。合理的な経営計画や資金確保策によって疑義が解消されると判断されれば、注記には至りません。つまり勝負どころは、経営者側の評価と、その裏付け資料の説得力にあります。
外資系企業に特有の論点──親会社サポート
海外親会社を持つ日本法人では、単体で見れば債務超過や赤字継続でも、親会社の資金支援により事業継続に支障がないケースが多くあります。この場合、監査上は親会社の支援の実在性と実行能力が焦点となり、実務では親会社からのサポートレター(経営指導念書・支援表明)の入手が定番の対応になります。
ただし、サポートレターは魔法の紙ではありません。支援の内容・期間が具体的か、親会社自身にその財務能力があるか、グループ監査人側の見解と整合しているか──こうした点まで確認されます。決算の直前にレターを依頼すると本国の法務・財務の承認に時間がかかることが多いため、早めの段取りが肝心です。
まとめ
継続企業の前提は、資金繰り・経営計画・親会社との関係が交差する、決算の総合格闘技のような論点です。期末に慌てないよう、疑義につながる兆候がある会社は、期中から監査人と認識を共有しておくことを強くお勧めします。
SMASH国際監査法人は、外資系企業の監査で親会社サポートを含むこの論点を数多く扱っており、グループ監査人との調整も英語で直接行えます。現在の監査対応にお悩みの企業様、監査法人の変更・新規選定をご検討の企業様は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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執筆者: 森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)
